天井を「ふさぐ」ドラマの室内セット
ここ数年のNHKの朝ドラや大河ドラマを見ていて思ったこと。
「室内セットに『天井』がある!」
気がつきました?
このヒトは何を言っているんだろう・・・って?
実は、そのことが特に気になったのは少し前、70年代の映画撮影所が舞台の小説の挿絵を描いたことが理由です。
これがその挿絵。
小説は榛野文美さん著、『花村凛子の傘』という作品の扉用挿絵。
ちなみに第95回オール讀物新人賞受賞作です。
物語の主人公は売れない女優なのですが、この小説を読んで僕の頭に浮かんだのが、当時の映画撮影中の様子を描く案。
そこで70年代の撮影所の室内セットを写した資料写真をあたりました。
当時の(今もそうでしょうが)室内セットは、絵のように天井はなく、上には橋渡しの板があります。
音声さんやカメラ、照明などが自由に配置できるように、という配慮から。
例えば水戸黄門や必殺シリーズ、むかしの大河ドラマも、そして朝ドラも、ほとんど天井が映らないようなカメラアングルで撮られていたと思います。(僕の記憶です)
また照明も真上から照らされて、俳優さんの額や髪の毛に上からの光が反射しているのが分かります。
時代劇で天井の照明はないだろう・・と、いまなら思いますが、それはテレビドラマの世界では「普通」でした。
それが『龍馬伝』ではかなりの割合で室内セットの天井はふさがれ、梁(はり)までがしっかり造られていました。
いま人気の朝ドラ『あさが来た』なんて、「室内、暗っ!」ですよ、ホント。
天井をふさいで室内を暗くしているので、俳優さんの背後が真っ暗だったりします。
でも多くの視聴者は、いまそこに不自然さを感じていません。
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セットの天井を塞いだことにはメリットがあります。
ひとつは天井が映ってもいいことから、室内でも極端なローアングルで撮影できること。
ローアングルはドラマチック度が増すアングル。
撮影時のカメラアングルの選択肢が増えます。
(『龍馬伝』ではローアングルを多用してました)
もうひとつ。
電気もない時代の本来の「光」を表現できるので、室内の雰囲気やリアリティが増すこと。
デメリットは・・・
天井部分もセットでしっかり造り込むためのコスト高でしょうか。
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以上は僕の勝手な想像ですけど、明らかに以前は「ご法度」とされていたかもしれない「セット室内の暗さ」が、いつの間にか「OK」になっています。
ドラマの照明も時代と共に変わるのですね。