Hattori Kohei Blog

イラストレーター服部幸平のブログ

『イラストレーター志望者&初心者』にお薦め、素晴らしい教科書!〜(2)

イラストレーターの中村佑介さんは売れっ子イラストレーター。
彼の作品をいろいろな媒体でご覧になった人も多いと思います。

この本の特徴は、そんな彼が自分の開く絵の教室に集まった生徒さんの作品を一人ひとり、その絵のパートのひとつひとつを具体的に指摘し、それを的確な言葉と絵に置き換えて、提出された作品の見事な「改善」を施すことです。

またユニークな点、それはこの本の【はじめに】で中村さんが言われているこの本のコンセプト。
それはプロのイラストレーターにとって大切な「絵を好きになってもらうコツ」をポイントに置いていることです。

絵を好きになってもらうコツ」。

美術系の学校にありがちな「絵を自由に描く」でも「自分らしい絵を描く」でもなく。
(ただし、この本はあくまで「プロのイラストレーターになるため」の本という前提で書かれています)


そもそもプロとはそれを「職業」「仕事」にしている人のこと。
つまりプロの世界はお客さんあって初めて成り立つ世界。
いくら自分の作品をイイ!と思っていても、お客さんの支持を得られなければ意味がありません。

中村さんは、お客さんの支持=「(自分の)絵を好きになってもらう」ことと明言してます。

ではその為にはどうすれば良いのか?
それを感覚じゃなく、具体例と言葉をもって読者に提示していきます。

この具体例が実に的確で見事。

例えばある生徒さんの作品。
メインの女の子のキャラクターが画面の中央にポン!とあり、背景はブルーのストライプとお菓子の写真のコラージュをパソコンのソフトを使って作成し合成しています。

つまり・・・背景が「お手軽に」作られた作品なわけです。

中村さんは「プロとアマチュアの差は、その絵を買う価値があるか否か」、と言い切ります。
その価値のひとつの要素として「手間を惜しまずどれだけ掛けているか」です、と。

センスでもなく、上手さでもなく改善のポインで「手間」に価値を置いている。
ここがとてもユニークで、僕は膝を思わず打ちたくなりました。

僕が自分の授業で、生徒に対してあやふやにしか伝えることが出来なかった感覚と言葉が、この本の中で見事に表現されているのです。

もう一つこの本の素晴らしいのは、生徒作品を元に、それを中村さんが少しづつ手を入れて作品が改善されていく様子が順を追って見られること。

全体の構図や色、絵の中のパーツの位置を変えたり、色を変えたりするのですが、「なぜそうするのか」を理論や言葉でもって解説してくれています。

また、作品に手間をかける意味やデッサンがなぜ必要か・・など、その具体的アドバイスが生徒の作品の特徴を壊すことなく、生徒の心情を傷つけることなく、実に的確に提示されて、その度に作品が改善されていくのです。

生徒の作品はテイストも内容も様々。
そこでの授業テーマも多種多様で、実に読み応えがありました。

値段も内容からすればとても安いと思います。
そして、なぜ値段を安くしているか・・・
理由は巻末の「おわりに」で書かれていますが、その意図も素晴らしいものでした。

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この本は特に「将来イラストレーターになりたい!」という人、そしてすでにイラストレーターとして仕事をしているプロの方にも読む価値があると思っています。

ぜひ手に取ってみて下さい。
お薦めです。