『イラストレーター志望者&初心者』にお薦め、素晴らしい教科書!〜(1)
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相変わらずイラストレーターという職業に憧れる若い人は多くいます。
小学生から高校生、専門学校や大学生。
もっと言うと社会人になっている人でも、プライベートの時間を使ってイラスト教室のような所へ通って「好きなイラストで仕事ができれば!」と願っている人も大勢います。
僕も専門学校の講師としてイラストレーションの授業を昨年まで受け持っていましたが、イラストレーションを「教える」というのは実はとても難しい。
ひとつは二十歳前後の生徒にとって、現役イラストレーターである講師の言葉やアドバイスの影響力が強すぎる・・ということ。
例えばアイデアスケッチ段階で、とある生徒のスケッチを横で見ながら
「このアイデアだとこういう考え方もあるよね」
と何気なく自分で口にしたセリフでも、生徒にとって、ソレは無言の圧力のようになって「そうすべき」と取られがち。
こちらは全然そんなつもりもないけど、しかし生徒の側に立って考えれば当然ですよね。
結果、生徒のアイデアスケッチはいつの間にやら僕のアイデアに変わってしまい、これでは課題をやる意味が半減です。
もう一つは技術面。
こちらは大きく分けて2つあります。
ひとつは画面構成力。
もうひとつはフィニッシュワーク、言い換えれば「仕上げ品質」。
画面構成では、絵の主役、準主役、脇役の区別があまりなく、各パートが同じ力の入れ具合で描かれていて、全体的に散漫な印象でメリハリが感じられない点。
また仕上げ品質とは読んで地の如く、作品を仕上げる部分でのつめの甘さ。
絵の具がはみ出ていたり、線の歪みだったり(味とは別)、密に描かなければいけないパーツへの描き込み不足、紙の白地に付いている汚れ、デッサンの狂い・・などです。
これらが合わさって「学生の作品っぽい」という素人作品の印象を観る者に与えています。(なんて書いていますが、僕も専門学校時代の作品を振り返れば、ぜんぜん偉そうに言えません・・)
こういう生徒の作品を前にして、よくありがちな講師のアドバイスが・・
「何かパッとしないんだよね」
「全体的にボンヤリしている」
「メリハリが感じられない」
「ちょっと雑だね」
「ぐっと迫って来るものがない」
・・なんて言葉。
逆に褒める場合でも、
「イイじゃない!」
「絵にパワーがある」
「描きたい気持ちが溢れている」
「絵が好き、っていう気持ちがよく出ている」
「イマ風な感じで、カッコイイと思う」
これじゃあ長嶋茂雄語録です。
「球がスッっと来るだろ、そこをグゥーッと構えて腰をガッとする。後はバアッといってガーンと打つんだ」
言葉が余りに感覚的過ぎて、だから言われた方は良く分からなかったりする。分からないからアドバイスは全然活かせず、課題をやっても生徒の力の蓄積になって行かない。
いい訳じゃないですが、自分も講師の経験から言えますが、生徒の作品から「感じてはいる」のだけど、それを【言葉として】【理屈を持って】的確に相手にアドバイスを与えるというのが実はとても難しいのです。
ところが、そんなアホ講師とは一線を画す、素晴らしいイラストレーションの教本がこの本でした。(つづく)