『アクアマリンの神殿』/装幀画ラフ(角川文庫)
下の絵は海堂尊氏の『アクアマリンの神殿』、その文庫カバーのリニューアル用装幀画のラフです。
小説を読んでから担当の編集者さんへ4案のラフをご提案しました。
このうちの一つでOKを頂き、原画データはすでに編集部へお渡ししています。
発売は6月ごろの予定です。
ちょっとお知らせまで。
ヨハン・クライフ・スーパースター
オランダの至宝、ヨハン・クライフの訃報が世界中を駆けめぐりました
子供の頃からいちばん好きなサッカー選手
俺的「スーパースター」「カリスマ」
とにかくカッコよかった
プレーを真似したのはもちろん、
スパイクを彼が履いているメーカーと同じ【プーマ】にしたり、
中学校のサッカー部のユニホームをオランダ代表と同じオレンジ色にしようとしたり・・
亡くなったと知り正直ショックです
合掌
下記は有名な74年のオランダ代表の試合
1974年、西ドイツワールドカップ【オランダ/ウルグアイ】戦
40年以上も前のVTRには、オランダのオフサイドトラップに、ウルグアイの選手が4人も5人も引っかかっている様子が映っています
異常な勢いで相手に襲いかかる「ボール狩り」
当時は考えられない最前線からのプレス
ポジションを自由に変えて捕らえ所のないオランダ選手
革命的な未来のサッカーを目の当たりにし
「コレはいったい何が起こっているのか?」
・・と理解できず、対戦相手のウルグアイ選手、監督、ベンチが呆然とするのも仕方がないですね
天井を「ふさぐ」ドラマの室内セット
ここ数年のNHKの朝ドラや大河ドラマを見ていて思ったこと。
「室内セットに『天井』がある!」
気がつきました?
このヒトは何を言っているんだろう・・・って?
実は、そのことが特に気になったのは少し前、70年代の映画撮影所が舞台の小説の挿絵を描いたことが理由です。
これがその挿絵。
小説は榛野文美さん著、『花村凛子の傘』という作品の扉用挿絵。
ちなみに第95回オール讀物新人賞受賞作です。
物語の主人公は売れない女優なのですが、この小説を読んで僕の頭に浮かんだのが、当時の映画撮影中の様子を描く案。
そこで70年代の撮影所の室内セットを写した資料写真をあたりました。
当時の(今もそうでしょうが)室内セットは、絵のように天井はなく、上には橋渡しの板があります。
音声さんやカメラ、照明などが自由に配置できるように、という配慮から。
例えば水戸黄門や必殺シリーズ、むかしの大河ドラマも、そして朝ドラも、ほとんど天井が映らないようなカメラアングルで撮られていたと思います。(僕の記憶です)
また照明も真上から照らされて、俳優さんの額や髪の毛に上からの光が反射しているのが分かります。
時代劇で天井の照明はないだろう・・と、いまなら思いますが、それはテレビドラマの世界では「普通」でした。
それが『龍馬伝』ではかなりの割合で室内セットの天井はふさがれ、梁(はり)までがしっかり造られていました。
いま人気の朝ドラ『あさが来た』なんて、「室内、暗っ!」ですよ、ホント。
天井をふさいで室内を暗くしているので、俳優さんの背後が真っ暗だったりします。
でも多くの視聴者は、いまそこに不自然さを感じていません。
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セットの天井を塞いだことにはメリットがあります。
ひとつは天井が映ってもいいことから、室内でも極端なローアングルで撮影できること。
ローアングルはドラマチック度が増すアングル。
撮影時のカメラアングルの選択肢が増えます。
(『龍馬伝』ではローアングルを多用してました)
もうひとつ。
電気もない時代の本来の「光」を表現できるので、室内の雰囲気やリアリティが増すこと。
デメリットは・・・
天井部分もセットでしっかり造り込むためのコスト高でしょうか。
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以上は僕の勝手な想像ですけど、明らかに以前は「ご法度」とされていたかもしれない「セット室内の暗さ」が、いつの間にか「OK」になっています。
ドラマの照明も時代と共に変わるのですね。
浦沢直樹展〜「描いて、描いて、描きまくる」/【漫勉】Eテレ
行ってきました。
開催中企画展 - 世田谷文学館
日本の子供にとって、「漫画」の影響はとても大きいと思います。
僕も子供の頃になりたかった職業はマンガ家でした。
小学校の卒業文集にも、そう書いてました。
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その漫画界でいま現在最高の一人、浦沢直樹さんの展覧会を見て、改めて日本の「漫画」の凄さを実感した次第です。
「漫画の文法」の凄さというのか・・。
コマ割り、擬音、効果線、人物のデフォルメ、カメラワーク。
様々な要素が駆使されて、劇的なドラマ性や動きが表現されている。
会場はもの凄い数の「浦沢漫画」の原稿で埋め尽くされていました。
そして、そんな圧倒的な展示量の漫画原稿の後ろに、僕には、過去&現代の膨大な数の漫画家や漫画家志望者の残像が見えて、ちょっとめまいを起こしそうでした。
浦沢さんの原稿に表れている、日本の漫画の様式美や文法は、浦沢さん一人だけの成果ではなく、多くの先人の工夫と現役世代の格闘の結果、あの迫力ある世界が生み出されているんだと・・。
会場はそこまで広くありませんが、とにかく展示数と熱量が凄まじく、僕は会場で4時間以上も見続けて足もクタクタ・・。
ここ数年のベスト3に入る展覧会でした。
観覧料金は大人800円。
格安です。
ジャンルに囚われず、「絵」の好きな人はぜひ!
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【追記】
現在Eテレで放送中の「漫勉」。
本当に素晴らしい番組で、先週シーズン2が始まりました。
(浦沢さん、よくぞこの企画を発案してくれました!)
僕も毎回食い入るように見ています。
もちろんすべて予約録画して、その後Blurayディスクに保存。
とにかくこの企画は浦沢さんのパーソナリティが無ければ成り立たないでしょうね。
ホストに徹して、ゲストの話しを聞き出す様子にも感心しました。
登場する漫画家さんの制作姿勢に刺激を受けつつも、我が身を恥じる次第です・・。
こちらもお薦めです!
『イラストレーター志望者&初心者』にお薦め、素晴らしい教科書!〜(2)
イラストレーターの中村佑介さんは売れっ子イラストレーター。
彼の作品をいろいろな媒体でご覧になった人も多いと思います。
この本の特徴は、そんな彼が自分の開く絵の教室に集まった生徒さんの作品を一人ひとり、その絵のパートのひとつひとつを具体的に指摘し、それを的確な言葉と絵に置き換えて、提出された作品の見事な「改善」を施すことです。
またユニークな点、それはこの本の【はじめに】で中村さんが言われているこの本のコンセプト。
それはプロのイラストレーターにとって大切な「絵を好きになってもらうコツ」をポイントに置いていることです。
「絵を好きになってもらうコツ」。
美術系の学校にありがちな「絵を自由に描く」でも「自分らしい絵を描く」でもなく。
(ただし、この本はあくまで「プロのイラストレーターになるため」の本という前提で書かれています)
そもそもプロとはそれを「職業」「仕事」にしている人のこと。
つまりプロの世界はお客さんあって初めて成り立つ世界。
いくら自分の作品をイイ!と思っていても、お客さんの支持を得られなければ意味がありません。
中村さんは、お客さんの支持=「(自分の)絵を好きになってもらう」ことと明言してます。
ではその為にはどうすれば良いのか?
それを感覚じゃなく、具体例と言葉をもって読者に提示していきます。
この具体例が実に的確で見事。
例えばある生徒さんの作品。
メインの女の子のキャラクターが画面の中央にポン!とあり、背景はブルーのストライプとお菓子の写真のコラージュをパソコンのソフトを使って作成し合成しています。
つまり・・・背景が「お手軽に」作られた作品なわけです。
中村さんは「プロとアマチュアの差は、その絵を買う価値があるか否か」、と言い切ります。
その価値のひとつの要素として「手間を惜しまずどれだけ掛けているか」です、と。
センスでもなく、上手さでもなく改善のポインで「手間」に価値を置いている。
ここがとてもユニークで、僕は膝を思わず打ちたくなりました。
僕が自分の授業で、生徒に対してあやふやにしか伝えることが出来なかった感覚と言葉が、この本の中で見事に表現されているのです。
もう一つこの本の素晴らしいのは、生徒作品を元に、それを中村さんが少しづつ手を入れて作品が改善されていく様子が順を追って見られること。
全体の構図や色、絵の中のパーツの位置を変えたり、色を変えたりするのですが、「なぜそうするのか」を理論や言葉でもって解説してくれています。
また、作品に手間をかける意味やデッサンがなぜ必要か・・など、その具体的アドバイスが生徒の作品の特徴を壊すことなく、生徒の心情を傷つけることなく、実に的確に提示されて、その度に作品が改善されていくのです。
生徒の作品はテイストも内容も様々。
そこでの授業テーマも多種多様で、実に読み応えがありました。
値段も内容からすればとても安いと思います。
そして、なぜ値段を安くしているか・・・
理由は巻末の「おわりに」で書かれていますが、その意図も素晴らしいものでした。
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この本は特に「将来イラストレーターになりたい!」という人、そしてすでにイラストレーターとして仕事をしているプロの方にも読む価値があると思っています。
ぜひ手に取ってみて下さい。
お薦めです。
『イラストレーター志望者&初心者』にお薦め、素晴らしい教科書!〜(1)
それがコチラ。
www.amazon.co.jp
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相変わらずイラストレーターという職業に憧れる若い人は多くいます。
小学生から高校生、専門学校や大学生。
もっと言うと社会人になっている人でも、プライベートの時間を使ってイラスト教室のような所へ通って「好きなイラストで仕事ができれば!」と願っている人も大勢います。
僕も専門学校の講師としてイラストレーションの授業を昨年まで受け持っていましたが、イラストレーションを「教える」というのは実はとても難しい。
ひとつは二十歳前後の生徒にとって、現役イラストレーターである講師の言葉やアドバイスの影響力が強すぎる・・ということ。
例えばアイデアスケッチ段階で、とある生徒のスケッチを横で見ながら
「このアイデアだとこういう考え方もあるよね」
と何気なく自分で口にしたセリフでも、生徒にとって、ソレは無言の圧力のようになって「そうすべき」と取られがち。
こちらは全然そんなつもりもないけど、しかし生徒の側に立って考えれば当然ですよね。
結果、生徒のアイデアスケッチはいつの間にやら僕のアイデアに変わってしまい、これでは課題をやる意味が半減です。
もう一つは技術面。
こちらは大きく分けて2つあります。
ひとつは画面構成力。
もうひとつはフィニッシュワーク、言い換えれば「仕上げ品質」。
画面構成では、絵の主役、準主役、脇役の区別があまりなく、各パートが同じ力の入れ具合で描かれていて、全体的に散漫な印象でメリハリが感じられない点。
また仕上げ品質とは読んで地の如く、作品を仕上げる部分でのつめの甘さ。
絵の具がはみ出ていたり、線の歪みだったり(味とは別)、密に描かなければいけないパーツへの描き込み不足、紙の白地に付いている汚れ、デッサンの狂い・・などです。
これらが合わさって「学生の作品っぽい」という素人作品の印象を観る者に与えています。(なんて書いていますが、僕も専門学校時代の作品を振り返れば、ぜんぜん偉そうに言えません・・)
こういう生徒の作品を前にして、よくありがちな講師のアドバイスが・・
「何かパッとしないんだよね」
「全体的にボンヤリしている」
「メリハリが感じられない」
「ちょっと雑だね」
「ぐっと迫って来るものがない」
・・なんて言葉。
逆に褒める場合でも、
「イイじゃない!」
「絵にパワーがある」
「描きたい気持ちが溢れている」
「絵が好き、っていう気持ちがよく出ている」
「イマ風な感じで、カッコイイと思う」
これじゃあ長嶋茂雄語録です。
「球がスッっと来るだろ、そこをグゥーッと構えて腰をガッとする。後はバアッといってガーンと打つんだ」
言葉が余りに感覚的過ぎて、だから言われた方は良く分からなかったりする。分からないからアドバイスは全然活かせず、課題をやっても生徒の力の蓄積になって行かない。
いい訳じゃないですが、自分も講師の経験から言えますが、生徒の作品から「感じてはいる」のだけど、それを【言葉として】【理屈を持って】的確に相手にアドバイスを与えるというのが実はとても難しいのです。
ところが、そんなアホ講師とは一線を画す、素晴らしいイラストレーションの教本がこの本でした。(つづく)
年末のご挨拶 〜2015年
今年も残りわずか。
いつもお仕事でお世話になっている方々に、この場を借りてお礼を申し上げます。
今日、仕事場の大掃除も完了し、MacProの内部清掃も終わりです。
今年は仕事の半分程をMacBook Proで行っていたせいか、それ程内部の汚れもなく簡単な掃除で済みました。
そのMacBook Pro。
購入当初考えた、ノート付属15インチ液晶を使っての新たな「トリプルディスプレイ」環境をやっとこの秋に実現出来ました。
結果はとても快適。
うまくノートパソコンの液晶画面を利用して、リーズナブルな追加金額でこの環境を実現できました。
その「リーズナブルな追加金額」で使用したパーツが下記のもの。
www.kuroutoshikou.com
マイナス点は画面のカーソル反応が少しカクカクすること。
またUSB接続なので、この機器に接続したモニターの正確なカラーマネージメントが出来ません。
そのマイナス面を差し引いてもお薦めできる製品です。
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【お知らせ】
12月30日〜1月3日まで年末年始休暇を頂きます。
下記の期間に頂いたメール等のご返事は4日以降となりますのでご了承下さい。
今年もありがとうございました。
良い年をお迎え下さい。
2015年12月27日